わたしは王となって
あなたという領土の小川や町はずれのすみずみまで
あまねく支配したいと願うのだけれど
実をいうとまだ地図一枚もってはいない
通いなれた道を歩いているつもりで
突然見たことのない美しい牧場に出たりすると
私は凍ったように立ちすくみ
むしろそこが砂漠であることを心ひそかに望んだりもするのだ
支配はおろか探検すら果たせずにわたしはあなたの森に踏み迷い
やがては野垂れ死にするのかもしれないけれど
そんなわたしのために歌われるあなたの挽歌こそが
他の誰にもとどかぬものであってほしい
『嫉妬』 谷川俊太郎
やっぱり人間は、自分自身が一番大切で、
それ以上の存在などありえないのかな。
わたしは一体なにを期待しているんだろう。