Thursday, May 18, 2006

幸せの島サマール

フィリピンで最も貧しいといわれる苦悩の島サマール。もしも目に見えるものだけに価格付けするのなら、
いわゆる先進諸国が経済的先進国であるように、確かにサマールは貧しいのかもしれない。

いわゆる途上国と呼ばれる土地に住む人々の開発へのあこがれ、そこに届いた民際協力としての氏の試み。貧困、スラム、人口流出、侵略戦争の爪あと、軽蔑される日本人、糞尿からのバイオガス・・・

柔らかしいタイトルや挿絵にある子どもたちの笑顔光る写真からは想像もできないサマールの重い現実。そのことを冷静に思考し、これだけの労力を費やして生み出されたこの本には、現実から目をそらない氏のサマールへの愛情が端々に溢れている。

あらゆる現実を知った上で、氏によって「幸せの島」と名づけられたサマール。もしも目に見えないすべてを価値付けられるなら、サマールはものすごい価格になるんだろう。あからさまには目に映らない豊かさにゆっくりと輪郭をつけてくれる1冊。


                    『幸せの島サマール』北上田毅
 
北上田氏は現在、JICA草の根技術協力事業
「生計向上プロジェクトと結びついたトイレ普及事業」にて奮闘中。