Monday, January 08, 2007

30

私は言葉を休ませない
時折言葉は自らを恥じ
私の中で死のうとする
そのとき私は愛している
何もしゃべらないものたちの間で
人だけが饒舌だ
しかも陽も樹も雲も
遠い飛行機が人の情熱の形で飛んでいく
青空は背景のような顔をして
その実何もない
私は小さく呼んでみる
世界は答えない
私の言葉は小鳥の声と変わらない
          谷川俊太郎『30』

自分の心の声さえ聞こえない
自分の耳さえ澄ましてくれない
自分の足跡さえ見えない
自由という世界で
奔放できずに翻弄される自分