Sunday, July 15, 2007

博士の愛した数式

わたしにとっての数式というと、人間らしさとは対極な感じがして。隙ない秩序でガチガチで、無機質で、受験勉強の思い出と絡み合って、どちらかというと今後もう開けなくてもいい引き出しの中にぴしゃりと収まっている。

それが、ページをめくる毎にまるで、人の手によって愛情たっぷりに美しく編み上げられた精巧で柔らかなレース編みのように思えてくるから不思議。それは、博士の愛するものへの純粋さが、数式と同じくらい永遠の真実のように描かれているからかもしれない。

なにより
この本の登場人物たちの愛情に満ちたやりとりは
、誰の役にも立たないようなささいな能力も、愛情を持って接すれば、自然と役割を見つけ出し、輝くことができること教えてくれた気がする。

優しい気持ちにしてくれる優しい一冊。
 
        「博士の愛した数式/小川洋子」